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セカンドオピニオン

気になることがあり、猫を動物病院へ連れて行った。
 
大事な愛猫を診せるのだから、適当なところへは連れて行きたくないし
ネットなどで色々調べて、猫専門の評判のよい病院を選んだ。
気になることと言うのは、
猫のおなかに小さなしこりのようなものが感じられること。
米粒ほどの小さなものだが、小
さくても乳腺腫瘍なども疑われることからものすごく心配になり、
とにかく早い方がいいと平日の夜、まるに頑張って早く仕事を切り上げてもらい
車で出かけた。
 
とりあえず診てはもらうけど、初めて行く病院だからどんなところかも分からないし、
いきなりレントゲンを撮るだの、すぐに手術するだのと言い始めたら
「今日はとりあえずいいです」と断って別の病院へも連れて行こう、
と言う話になった。
 
重大な病気であればなおさら、セカンドオピニオンは必要だ。
 
受付の女性(アシスタントあるいは看護助士)は、割と素っ気なく
私の肩にかけたカバンから顔を出している猫を見て
「頭、入りませんか。」と言った。
あ、入ります。 と猫の頭をカバンに押し込みファスナーを閉めた。
「駐車場からここへ来るまでに飛び出してしまったってこともあるので。」
 
うちは連れて出るのは慣れているし、そんなことはない、大丈夫。
などとは言わなかった。
万が一、を考えて向こうはそう言ってくれているのだ。
ただ言い方が素っ気ないだけだ。
 
初診なので、名前や住所などを用紙に書き込み
他に待っている患者がいなかったので、すぐに診察室へ通された。
 
厳しい・怖いと評判の先生も、普通に笑顔で「こんにちは」と迎えてくれた。
どうしました?と聞かれ、
おなかにしこりがあるような気がするんです、と答えた。
“しこり”という言葉に、先生の表情は少し厳しくなる。
避妊手術もしていないことを告げ、年齢は4歳になると話した。
 
どこですか、と猫を触り始める。
このあたりです、と指でさぐりながら場所を示す。
「ああー、乳腺だね。」
やはり、という思いがあったので「腫瘍とか・・・?」と恐る恐る聞いてみる。
「いや、腫れてるだけだと思うけどね。」
でもその部位を手術で切り取り、検査をしてみないと何とも言えない。
手術となると全身麻酔になり、
どうせ避妊手術していないなら ついでに両方やった方がいいでしょうと言われた。
 
避妊手術は今や当たり前のように一般的になっている。
発情期はこなくなるし、ホルモン分泌による病気のリスクも低くすることができる。
と、言われている。
統計による確率の話だ。
 
私とまるが、これまでうちの猫に避妊手術を受けさせてこなかったのは
それが本当なのか、という疑問が残るからだ。
子宮を取れば、絶対にその関連の病気にならない。
ということではないのだ。病気になる可能性が低くなる、というだけだ。
手術をしても乳腺腫瘍になる場合もあるし、それは分からない。
ただ可能性を低くするためだけに臓器ひとつを失わせる必要があるのか。
そこがいまひとつ確信を持って納得できないのだ。
 
避妊手術をしなくても、何の病気もなく20年ほど長生きするかもしれないし、
手術をしても何らかの病気で短い寿命になってしまうかもしれない。
それは確率への賭けだ。
 
「よく、手術でおなかを切るのが可哀想だという飼い主さんもいますけどね、
 手術しないことの方が可哀想なんですよ。
 病気になる可能性があるなら、それを取り除いてあげないと。」
と獣医は言った。
 
可哀想だから手術をしてこなかった訳ではない。
そんな甘い感情論だけで猫を飼ってきた訳じゃない。
可能性の話をするなら、
人間だって臓器として必要のない盲腸をあらかじめ取り除いておくべきなのか。
大人になってからの虫垂炎は怖いし危ない。
それなら大人になる前に皆、摘出手術を受けた方がいいのか。
 
私とまるは、悪くなってもいない体を切るということに抵抗がある。
悪くなってもいない臓器、健康な体にメスを入れることにより
完全だった体が不完全なものになるということへ
何かしら納得の行かないものがあるのだ。
 
愛猫の生む子猫の顔を見てみたい、という思いもあった。
「赤ちゃんを産ませようかとも思って・・・」
そう獣医に言うと、
「生ませるにしても、2歳まで。 もう4歳でしょ。
 人間で言うと、えーと35ぐらい。
 高齢出産になるでしょ。 マルコウだよ。」
そう言い放った。
私は34歳、出産経験なし。
ハイ、私もです! と手を挙げようかと思ったが。
私は、いちいち年齢や女性のデリケートな話に反応するタイプではないので何も言わなかったが、
こだわる人なら それは大いに傷つく言葉だろう。と思った。
 
先生は何かにつけ、断言し、意見を押し付けてくる。
私もまるも人の話を聞かない人は信用しない。
こっちの意見を聞こうとせず、「それは○○だ」と言い切る態度の端々に
患者(飼い主)を 均一に皆 自分より無知な人たち と捉えているように感じた。
 
心配なことは全部話した方がいいだろうと、
私は普段、猫の食事を半分手作りにしていることを言った。
「あー、手作りは危険だね。」
と間髪入れずに獣医は言った。
獣医の目からすればそう思うのは往々にして仕方ないのだと思いながら、
もしかしたら手作り食が栄養の偏りを招き、イエローファットになっていたりはしないかと
そういう可能性もあるかもと話した。
 
「どういうものをあげてるの?」と聞くので、市販の総合栄養食に加え、
魚や野菜をゆでたりしていると答えた。
「あー、猫に野菜は必要ないんだよ。」また断言された。
 
そうか、この先生もこの考え方の人か。と思った。
 
猫の消化器官は短く、野菜を消化分解するようには出来ていない。
野菜を食べたら下痢をする。だから猫に野菜は必要ない。
肉だけを食べていればいいのだ。
こう書かれている本は多い。
 
その反対に、
現代の飼い猫はネズミなどの小動物や昆虫を捕まえて食べることが少ないため
その内臓に含まれた未消化の植物からの栄養を摂ることができず、
肉だけ食べていたのでは本来の栄養が得られない。
猫の腸も、最初は下痢を起こす場合もあるが、食べ慣れるうちに
野菜なども消化できるようになり、下痢もしなくなる。
野菜を食べさせることに問題はない。
むしろその栄養を得るためにも全体の2割ぐらいの野菜は食べた方がいい。
とされている本も最近は増えているのだ。
 
どちらを信用・選択するかはそれぞれだ。
どちらも筋の通った話しだし、どちらも間違いではないのかもしれない。
 
野菜も食べさせる、そういう飼い主がいることも
飼い主それぞれが一辺倒ではなく、それぞれの飼い方をしているということも
獣医はもっと認めるべきではないのか。
 
私は気まぐれに趣味で猫の手作り食を作っているわけではない。
それは愛猫を心から大事に思うからで、
一般的な市販の有名フードが添加物や化学物質に汚染されていることを危惧して
あえて安全な手作り食にしているのだ。
 
総合栄養食のドライフードだけを食べていればそれで大丈夫、
とするならそれに含まれる危険物質による病気の可能性はどうするのか。
 
現に去年はメラミン混入フードのリコール問題があった。
あれは起こるべくして起こった事件だ。
いい加減な材料を使い、大量・安価に生産することだけを考えたことへの当然の結果なのだ。
そういうフードを食べさせたくはない。
 
危険な可能性をなくすために避妊手術をするのなら
死の危険のあるフードは食べさせるべきではない。
同じことじゃないか。
 
しかし獣医は、真っ向から否定する。
私もまるも話しても無駄だと心の中で悟り、
それ以上は必要なこと以外は何も話さなかった。
 
「手術、一番早くなら今度の金曜か土曜に・・・」
と話しをどんどん進めている獣医、
私はそれまでの猫の病気への心配と獣医との話しによる感情の高ぶりで
正常な判断が出来にくくなっていた。
「とにかくどっちにしても避妊手術はしないとどうしようもないでしょ。
 もう遅いぐらいなんだから。」
その言葉に「じゃあ予約を」と言いそうになった。
 
まるが、「予約は電話でもいいですか」と聞いた。
その場で何もかも事が決まりそうになるのを回避したのだ。
 
「もちろんいいですよ」
ということで、その場で日取りは決めず、手術の説明が書かれた紙だけをもらって
帰ることになった。
 
私一人だったら、先生に不信感を抱きつつ、言いたいことも言えず、
でも、手術を頼むことにしていたかもしれない。
一人で行かなくてよかった。
 
 
患者の側も意見や考えは複数あった方がいい。
 
家に帰って、色々話しをして、
いつもワクチン接種に行っている病院へ連れて行こうということになった。
少し遠いけれど、あそこの先生は自分の意見を押し付けたりしない。
こっちの話しをちゃんと聞いてくれる。
色々話した上で、それでも避妊手術をした方がいい、という話しになれば、
それはお願いすることになるかもしれない。
 
手術するにしても、信頼のできる病院に任せたい。
腕は確かかもしれないが、コミュニケーションの取れない病院はダメだ。
うちには合わない。
 
自分で話すことができない愛猫のことだからこそ、ひとつの方針に乗っかるのは危険だ。
「セカンドオピニオン」という言葉は医師の側だけではなく
患者の側にも必要なのだと、なんとなく思った。
 
 
 

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